日立駅前の新都市広場|シビックセンター

茨城県にはポストモダン建築として有名な「つくばセンタービル」がありますが、県北部の「日立市」にも、なんとも興味を惹かれる都市広場がありました。

日立駅

日立駅のホームに降り立ち、階段を上がると、大きなガラス張りの向こうに太平洋のパノラマが広がりました。

現在の駅舎は建築家・妹島和世氏が設計したもので、2011年に竣工しました。海沿いのランドスケープを活かした、現代的でスタイリッシュな建築です。

改札から駅前までは「動く歩道」で結ばれています。駅構内では現在も貨物列車の発着が見られますが、かつては今よりも大規模な貨物ターミナルが存在し、鉱業や製造業を支える大動脈として機能していました。

もっとも貨物輸送が衰退してしまった現在も、日立市が国内有数の工業都市であることに変わりはありません。

平屋的な印象の駅舎。

観光客からも大人気の日立駅ですが、その外観は驚くほどシンプルです。1フロアに観光案内所や店舗がコンパクトに収められた、平面的な建築物となっています。

しかし、駅前広場の反対側に目を向けてみると、ミニマルな駅舎とは対照的な 謎の球体を擁する立体的な建築 が姿を表しました。

日立新都市広場

駅前から “謎の球体” を目指して歩くと、突如としてポッカリと空いたような石畳の空間が現れます。

ここは「日立新都市広場」。謎の球体の建物=日立シビックセンターの、屋外ゾーンとして位置づけられています。野外ステージや地下ホールなどもあり、イベントスペースなどで活用されている場所です。

2つの大型施設の前庭であり、駅とつなぐ導線でもある。

かつてこの場所は「日立鉱山」からやってくる貨物列車の、巨大な積み出しヤードでした。しかし、輸送手段がトラックへ移り、鉱山も閉山。役割を終えた広大な跡地は 再開発の舞台 となります。

1990年(平成2年)に「日立シビックセンター/新都市広場」が完成。翌年には「イトーヨーカドー日立店」も開業して、現在の景色が出来上がりました。

ポストモダンな空間

広場に整然と並ぶ石造のポールや大理石の階段は、どこか古代遺跡のような趣があります。周りの球体や尖塔と相まって、いかにも ポストモダン的な建築空間 となっています。

ポストモダン建築
装飾を奪還した祝祭の記号——合理的秩序を解体し、過去の意匠を奔放に引用する、遊び心に満ちた多義的な建築様式。近代建築 ・・・ 西洋的な歴史ある建築様式モダニズム建築 ・・・ 形は機能に従う、効率的なハコポストモダン建築 ・・・ 装飾と遊び心...

ポストモダン建築とは、機能性(モダニズム)よりも象徴性や装飾性を重視した建築様式のこと。日本では1980〜90年代にかけて流行しました。

この広場は、産業都市から文化都市へと脱皮しようとした当時の日立市が描いた、野心的な「未来の顔」だったのでしょう。

しかし、都市の威容を誇示する立派なデザインは、ヒューマンスケールからすると少々大きすぎたようです。

イベントが無い時の広場はがらんとしており、どこか寒々しい雰囲気です。近年のサードプレイス的な “居心地の良さ” を重視する広場設計とは対極にある、1980年代の理想都市の姿 をなんとなく感じることができました。

エスパルドリームプラザの観覧車|ドリームスカイ
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商業施設:ヒタチエ(旧イトーヨーカドー)

1991年(平成3年)に「イトーヨーカドー日立店」として開業した、広場の西側に隣接する商業施設。ツインタワーのような外観とアーチ橋のような連絡通路に、ポストモダンの要素を感じます。

2022年にイトーヨーカドーが撤退し、現在は「ヒタチエ」という商業施設として営業しています

建物の奥には「パティオモール」や「日立銀座」といった商業地が続いています。新都市広場とヒタチエは、中心街の商業ゾーンへ誘う “門” のような役割も果たしているのです。

複合施設:日立シビックセンター

1990年(平成2年)に竣工した「日立シビックセンター」は、科学館、図書館、会議室、音楽ホールなどが集まる複合文化施設です。設計はル・コルビュジエの流れを汲む坂倉建築研究所が担当しました。

シンボルは、直径22mの「天球劇場」。内部はプラネタリウムとなっています。

お台場のフジテレビ本社を彷彿とさせる(竣工はこっちのほうが早い)、バブル期らしいダイナミックなデザインです。

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屋上展望台

屋上の展望台には、無料で入ることができます。

外に出れば、先ほどまで見上げていた天球劇場が目前に、そして眼下には太平洋と山並みに挟まれた回廊のような日立市街地が一望できます。

日立回廊
茨城県北部にある、県内第三の都市。日立製作所などの企業城下町として知られる。

改めて新都市広場を眺めてみると、歩行者空間を中心としたゆとりある計画都市のような景色が広がっています。

バス・タクシーターミナルよりも、圧倒的な広さを誇る歩行者空間。

しかし利用者目線では、商業施設も文化施設も駅直結の方が便利だったようにも感じます。近年のトレンドは駅直結、あるいは駅舎の中に全て集約です。

反対側を見ると、現在も稼働し続ける三菱重工の施設が見えました。

鉱山は閉山しましたが、そこから派生した日立製作所が世界的なメーカーへと成長を遂げたことで、日立市は他の鉱山都市とは異なる、企業城下町としての活路を見出したのでした。

球体の非日常

展望台から降りたあとは、街なかを散策しました。

ふと後ろを振り向くと、ビルの谷間に浮かぶ巨大な球体が見えました。日立市民にとって日常だと思われるこの景色も、私にとっては非日常の旅の記憶となりました。

訪問日 2026年1月

アクセス・宿泊

HP:公式サイト
交通:日立駅からすぐ

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