ごくごく平凡な通勤通学路線を、全車指定席の特急が駆け抜ける。
ラッシュ時間帯の着席需要と、川越への観光アクセスというの2つの顔を持つ 特急レッドアロー「小江戸」号 です。

乗ってみると、昼間の時間帯のガラガラっぷりに驚かされます。空気輸送とも揶揄され、東日本大震災の後には消費電力を抑えるためにしばらく運休となりました。
しかし、西武新宿線の看板特急としてのプライドなのか?たとえ通勤客や観光客がなくとも、日中毎時1本(朝夕は毎時2本)の運行を守り続けてきたのです。
西武新宿線から本川越へ

通勤客も観光客もいない午後14時頃、特急小江戸に乗車して終点の本川越を目指します。
起点の「西武新宿駅」があるのは、JR新宿駅から500mほど離れた場所。歌舞伎町へのアクセスは抜群ですが、世界最大級のターミナル駅に直接繋がっていないのがなんとも歯がゆいです。


この西武新宿駅の立地の悪さが、西武新宿線=パッとしない路線というイメージの要因の1つになっています。次の「高田馬場駅」が実質的な乗り換えターミナルとして機能していますが、埼京線や湘南新宿ラインに通過されてしまうあたり、やはりパッとしないです。



山手線と別れてからは、下町っぽい雰囲気の漂う西東京エリアを走ります。車窓からは私鉄沿線らしい街並みが見えます。
徐々に武蔵野らしい緑が増えてくると、埼玉県内に入り「所沢駅」に到着しました。
庶民的な街に垢抜けない路線。そこを有料の優等列車が駆け抜ける光景は、意外性があって興味深いものです。



都内では線形が悪くあまりスピードも出ませんでしたが、埼玉県内では打って変わって、直線的な線路を爆走します。景色もだいぶ開けてきました。
新宿から45分、終点の「本川越駅」に到着します。
本川越駅は市内の他路線の駅からは離れている一方で、観光エリアから最も近い場所にあります。乗換駅としては不便ですが、観光地の玄関口としては一歩抜き出ているのです。

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特急「小江戸」誕生と課題

1993年(平成5年)に登場したニューレッドアロー(NRA)は、西武秩父線・池袋線の特急「ちちぶ・むさし」と、西武新宿線の特急「小江戸」に投入されました。
それまで西武新宿線には有料の優等列車は存在しなかったのですが、当時JR各社が通勤客向けに「ホームライナー」を走らせて好評だったことから、新たに特急の導入に踏み切ったのです。

実際にその目論見は当たり、朝夕には満席になることもしばしばあります。特急”小江戸”の名を冠してますが、その実態は ”ホームライナー川越” なのです。
都市間輸送と競争力
特急というものは本来、都市と都市を結ぶ都市間輸送を担う存在です。
沿線には、川越市(人口30万人)や所沢市(人口30万人)などの都市がありますが、同時に2つの壁がありました。

1つ目は距離の近さです。
川越市は都心から30kmしか離れておらず、大宮、柏、千葉、立川、町田、横浜など同じくらいの位置関係にあります。上野‐大宮間、新宿‐町田間、東京-千葉間のみで完結する特急、として考えてみるとその短さを実感できます。

2つ目は、速達性の低さです。
前述の例でいうと、新宿‐町田間でロマンスカーを利用する人はそこそこ多く、千葉駅に停まる成田エクスプレスも増えています。この距離でも、速達需要や着席需要は存在しているのです。しかしながら、特急小江戸では川越まで45分かかるところ、東武東上線副都心線直通のFライナーならば40分で行けてしまいます。
そのため、着席需要の低い日中時間帯の利用率が低いのです。
特急「小江戸」廃止とライナー化
2019年に西武秩父線・池袋線に新型特急ラビューが登場した一方で、西武新宿線では長らく動きがありあせんでした。
そしてついに、2026年度中のライナー型車両への置き換えが発表されます。

一方で、これまで散々 ”平日昼間の利用者がいない” と言ってきましたが、全くいないわけではないのです。輸送力過剰な面は否めないですが、それでも わざわざ追加料金を払って乗る人 が一定数いるのです。
朝夕の通勤時間帯にしか顔を出さない〇〇ライナーや土日運転の観光列車ではなく、れっきとした特急として ”毎時1本” 堅実に運行を続けている。それによって見かける頻度が上がり、いつでも乗ることができるという利便性のアピールにも繋がっているのでしょう。データイムがあってこそのコアタイムである。

こうして20年にわたり育て上げてきた西武新宿線の特急文化。それを手放してしまうのは、それはそれで惜しい気もします。
訪問日 2025年4月
アクセス・宿泊
区間:西武新宿ー本川越
路線:西武新宿線
HP:公式サイト

