1985年(昭和60年)3月14日。
水戸ー北鹿島(現:鹿島サッカースタジアム)間にて華々しく開業した「鹿島臨海鉄道大洗鹿島線」は、国鉄再建の真っ只中に、日本鉄道建設公団により建設が進められました。


東関東を走る高規格鉄道路線。
大洗▶水戸 乗車レポ
全長53kmにも及ぶ鹿島臨海鉄道大洗鹿島線。その実態を、2つの乗車レポにてご紹介しましょう。まずは近郊区間の水戸‐大洗間から。
大洗駅 大洗鹿島線の拠点

駅舎内には鹿島臨海鉄道の本社も置かれている。


苫小牧行きのフェリーの発着地、あるいはアニメの舞台としてその名が知られた大洗。その玄関口はなかなか立派で、駅舎に併設して観光案内所やカフェ、売店や窓口などが置かれています。昨今の無人化が進んでいる駅において、人を感じる駅でした。
改札を抜けて、高架線上のホームに上がると、2面3線の立派なホームと車両基地が見えます。本社もあって車両基地もある。なるほど、ここが鹿島臨海鉄道の拠点なんですね。
水戸駅 県庁所在地の近郊区間

水戸と大洗の間はおよそ10km。朝夕は通勤通学でかなり混雑するそうで、1時間に2〜3本の高頻度で運転されています。
県央から遠く離れた鹿島地区までを結ぶ路線ではあるのですが、実態は、水戸市近郊の需要を支える路線なのです。

2両編成の水戸行きの列車に乗車
さすがに日中の時間帯は車内も空いており、ゆったり座ることができます。沿線は宅地化されておらず、田畑の中に2つの停車駅があるのみでした。
水戸▶鹿島神宮 乗車レポ

次に乗車したのは休日の夕方。「水戸駅」から終点の「鹿島神宮駅」まで全線走破します。
夕方の水戸発の下り列車は、帰宅客でほどよい賑わいを見せており、ほとんどの座席が埋まるほどでした。エンジン音を響かせながら水戸駅を発車します。
車窓と高架橋
鹿島“臨海”鉄道は、車窓から海が全く見えません。太平洋に沿いつつも、内陸側の丘陵地帯を走っているのです。



一方で、車窓からは茨城県らしい風景が楽しめます。日本で2番目の大きさの霞ヶ浦は見えませんが、北浦と涸沼といった湖沼の景色が楽しめます。
茨城県のシンボルといえば筑波山。広大な関東平野の中にポツンとそびえる独立峰は、古くから人々の信仰を集めてきました。

しかし個人的には、単線非電化の高架橋がのどかな風景の中を一直線に貫く姿こそ、一番の魅力だと感じています。
高規格な路線を高速で駆け抜ける、転換クロスシートの古い普通列車。2023年に引退した湖西線の117系を思い出します。あのリッチな乗車体験を、東関東で再び味わうとは…。
新鉾田駅 市内唯一の鉄道路線

列車は「新鉾田駅」に到着。ここで列車行き違いのために数分間停車します。水戸を出た時点では大勢いた乗客も、大洗と新鉾田でほとんどが降りていきました。
鉾田市にはかつて鹿島鉄道という路線があり、1.5kmほど離れた場所に「鉾田駅」がありました。2007年の廃止以降は、市内唯一の鉄道路線となっています。

鹿島神宮駅 JR乗り入れ
ここから先はさらに本数が少なくなり、日中は2時間に1本の閑散区間の入ります。丘陵地帯を高架とトンネルで突っ切る爽快感と、夕暮れ時のエモーショナルな車窓を楽しみました。
列車は臨時駅である「鹿島サッカースタジアム駅」を通過して、終点の「鹿島神宮駅」に到着します。

実際には、鹿島臨海鉄道の終着駅は「鹿島サッカースタジアム駅」です。しかしながら、全ての列車がJR鹿島線の「鹿島神宮駅」まで乗り入れているのです。
東関東の新快速? 2ドア・転換クロスシート
引退迫る6000形

1985年(昭和60年)の開業当時から活躍を続ける6000形。2つドア・転換クロスシートの近郊型車両です。
同時期には、東武鉄道の2つドア・セミクロスシート車両である6050型や、伊豆急行のリゾート21、名鉄のパノラマDX、小田急ロマンスカーのHiSEなどがデビューしています。当時は私鉄でデラックスな車両が相次いで出たんですね。
登場から30年近く経ち、上記の中でも既に廃車が発生しています。鹿島臨海鉄道においても、2016年に新型車両が登場しました。

後継車両としてデビューした8000形
しかしながら、新型車両は3つドア・オールロングシートとなりました。水戸-大洗間の混雑緩和が求められた一方で、海水浴客などの観光需要は減ってしまったのです。
パラレルワールドの列車旅・昭和60年鉄道
車内にずらりと並んだ転換クロスシート。優等列車を思わせる2つドア。昔の新快速のような、昭和後期のデラックス車両が、今も東関東でひっそりと活躍しています。
単線非電化のローカル線でありながら、ハイスペックな高規格路線。コンクリートの高架橋が、田園風景を一直線に貫く。


新鮮さと懐かしさを感じる不思議な旅。この独特な乗車体験を、「パラレルワールドの列車旅」「昭和60年の鉄道旅行」と表現するのは、少し言い過ぎでしょうか。
乗車日 2022年11月5日 2023年9月7日
アクセス
鹿島臨海鉄道大洗鹿島線は、水戸駅から鹿島サッカースタジアム駅(鹿島神宮駅)までを結ぶ鉄道路線。
公式サイトはこちらから。
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