茨城県水戸市の街の中心にそびえたつ、象徴的なシルエット。
建築家の磯崎新氏が手掛けたタワーは、街のシンボルとして鑑賞するのはもちろん、実際に中に入り、地上100mからの景色を楽しむこともできます。
ポストモダン建築

水戸市制100周年を記念して造られた、高さ100mの「水戸シンボルタワー」。
グネグネとした幾何学的で独特な形状は、1970~90年代に広まった ポストモダン建築 の流れを汲むものです。近代的なモダン建築が否定してきた「象徴性」「遊び心」を、都市の中心に高い塔を打ち建てることで見事に蘇らせました。
近代(モダン)建築:機能性や合理性、効率性を追求
ポストモダン建築:象徴性や装飾の復活

竣工したのは、バブル真っ只中の1990年のこと。他のどの都市のランドマークとも似ていない唯一無二のキャラクターは、どことなく万博の「ミャクミャク」のような、不気味さや生命力、愛らしさすらも感じさせます。
どこかパッとしない北関東の主要都市たちの中で、「水戸」のアイデンティティを必死に打ち出そうとしてる ようにも感じました。
登ることもできるモニュメント

あまりに現実味のない見た目に「え、これ本当に登っていいの?」とためらいますが、麓へ行けばしっかりとしたエントランスがあり、券売機があり、エレベーターがあります。
近未来的な見た目ですが、中身は1990年代の少し古い公共施設であり、地に足のついた展望塔です。

そして実際に登ってみると、”展望台としての機能も擁している塔”、あるいは ”登ることもできるモニュメント” ということに気が付きました。

潜水艦のような展望台

展望塔というのは、高所から景色を眺めるという ”機能” のために造られます。そこには大きな窓が設置され、見渡す限りのパノラマが楽しめます。
しかし、ここはポストモダニズム。景色を眺めるための大きな窓を、否定しました。

潜水艦の小窓をのぞき込むかのようにして、地上100mからの景色を眺める。ここでしか味わえない体験です。
丸い額縁に切り取られた水戸の街並みは、まるで一枚の絵のようでした。
常磐地方 水戸の風景

南側は、麓には「水戸市民会館」や「京成百貨店」といった中心市街地が広がり、その先には水戸市のシンボル「千波湖」が佇み、さらに奥には高さ116mの「茨城県庁」も見えます。
天気が良ければ「筑波山」まで見渡せ、まさに茨城県を代表する景観です。

北側は、ちょうど中心市街地が終端を迎え、その先には郊外の田園地帯が広がっています。
彼方に見える細い塔は、日立製作所が所有する高さ213.5mの「エレベーター試験塔」です。

北の那珂川と南の千波湖に挟まれた、台地の上の中心市街地。そのさらに南側には、バイパス道路を中心に県庁やイオンが並ぶ新たな市街地も形成されています。
このように俯瞰して街の状況が見られることも、地域における展望塔の役割の1つと言えるでしょう。
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水戸芸術館

奇抜なタワーの土台となっているのが、1990年に開館した「水戸芸術館」です。
美術館、コンサートホール、劇場を備えたこの文化施設は、水戸市による ”文化による街づくり” の一環として建設されました。

当時はバブル経済の絶頂期であり、地方自治体にも潤沢な財源がありました。企業や地方自治体が文化・芸術活動を支援する “メセナ(Mécénat)” の考えが広がる中で、プロジェクトが始動します。
設計を手掛けたのは、ポストモダン建築の第一人者である磯崎新氏です。

9つの展示室からなる「現代美術ギャラリー」には常設展がなく、現代アートを中心とした企画展が開かれています。
正直アートの世界はよくわからないし、面白さを受け取れないこともあるのですが、個人的にここの展示は刺さるものが多いです。
MitoriO のアイコニック

1990年の「水戸芸術館」開館以来、中心市街地は進化を続けており、「京成百貨店」(2003年)や「水戸市民会館」(2023年)といった大型施設が誕生しています。
中心市街地に隣り合うこれら3つの大型施設は「MitoriO」と名付けられています。
大通り沿いに並ぶ2つの集客施設は、中心市街地らしい洗練された都市景観を生み出しています。しかし、その後ろにすらりと伸びるタワーはやはり奇抜で、アイコニックとしての役割は未だに圧倒的だと言えるでしょう。
訪問日:2025年6月、2022年11月
アクセス・宿泊
HP:水戸芸術館
交通:水戸駅から徒歩20分 泉町一丁目バス停
宿泊:市内の宿泊施設 一覧は こちら から。
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