姫路モノレールと大博覧会|夢の行楽地 未来の乗り物

1966年(昭和41年)に開業した「姫路市交通局モノレール線」は、同年に開催された「姫路大博覧会」へのアクセス手段を担いつつ、将来的には市内環状線や陰陽連絡線として大きく発展する予定でした。

しかし、開業から10年も経たずに廃止されます。

現在も姫路市内に残る 未来の乗り物の廃線跡。コンクリートのレールを辿った先にある博覧会の跡地。終点の手柄山には、どこか懐かしく賑やかな行楽地がありました。

姫路大博覧会とモノレール計画

街の近くの小さな山は、「モノレールで行く楽しい行楽地」へ姿を変えた。

兵庫県姫路市にある手柄山は、第二次世界大戦後に都市公園として整備されてきました。そこに転機が訪れたのが、1966年(昭和44年)開催の「姫路大博覧会」です。

閉会後、手柄山には「遊園地」「水族館」「植物園」「文化センター」「体育館」「プール」などが続々と建てられました。姫路市の娯楽・文化・スポーツの一大集積地となったのです。

エキスポ
SF映画のような未来的デザインのパビリオンや最先端技術の展示。日本の豊かさを象徴し、希望に満ちた時代を映し出してきた博覧会は、都市開発やレジャー産業にも大きな影響を与えてきました。

その手柄山までのアクセスを担ったのがモノレールです。

都市間高速輸送構想

ロッキード式は、最高速度160km/h運転も可能とされた

1966年に開業した「姫路市交通局モノレール線」は、初年度は会場へのアクセス路線として活躍します。しかし、これはまだ序章に過ぎませんでした。

まずは市内近郊の環状路線となり、最終的には日本海側の都市まで結ぶ、壮大な計画が待っていたのです。

モノレール モダニズム
コンクリートや鉄骨を用いた機能的で合理的なデザインに、昭和の未来都市やSF映画が描いたノスタルジックな夢を重ね合わせて。モノレールの持つ、革新性と懐かしさが共存する独特な魅力に迫ります。

当時は、次世代の交通手段として注目されていたモノレール。なかでも米ロッキード社とともに開発されたロッキード式モノレールは、将来の高速・都市間輸送を担うものと期待されたのです。

計画中止と廃線

ところが、開業翌年から利用が低迷します。

短い距離と高額な運賃が仇となり、利用者が激減した。

多額の建設費が返済できないどころか、累積赤字は膨らむばかり。とうとう延伸計画は中止となり、1974年に営業休止、1979年には正式に廃止となります。夢は幻に消えました。

結局、ロッキード式モノレールが都市間輸送のスタンダードになることはありませんでした。モノレールが本領を発揮するのは、大都市の中量輸送機関だったんですね。

モノレール廃線跡巡り

廃止から半世紀以上が経ちますが、現在も遺構が残ります。

山陽新幹線に乗って姫路駅に降り立つと、綺麗に整備された駅前広場とビル群の向こうに「姫路城」がそびえたちます。人口50万人の都市と歴史的遺産が織りなす、世界に誇る都市景観です。

そんな表通りから西へ外れると、違う味わいの景色が広がりました。

姫路城口(北口)を出て少し歩くと、街の中に突如現れる。

古い建物の上に伸びる、コンクリートの橋脚。これが姫路駅から手柄山までの1.6㎞の道のりの最初に現れる廃線跡です。

まるで屋上に建設されたような橋脚ですが、実際には、橋脚の周囲に後から建物が造られたそうです。建物が残る限りは、橋脚も解体できず、現在も残っています。

街中に佇むコンクリートの塊

営業期間はわずか8年でしたが、廃墟としては半世紀近くも残り続けました。しかし、それも間もなく見納めのようです。

2016年には、唯一の中間駅だった大将軍駅が解体され、現在は更地となっています。廃線当時は「撤去費用が嵩む」として放置されましたが、近年は解体作業が進んでいるのです。

その一方で、保存すべきものはしっかりと保存されています。

いずれ消える運命にある廃線跡。
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手柄山交流ステーション

建物の3階に、モノレール展示室がある。

廃墟も半世紀経てば、遺産になります。

終着駅の手柄山駅跡は、2011年に展示施設「手柄山交流ステーション」としてオープンしました。車両とホームは35年間も建物内で放置されたのですが、結果的に、当時のまま残されることとなったのです。

旧手柄山駅

ホームに上がると、発車を待つモノレールの姿がありました。

わずか8年で幕を閉じた姫路モノレール。それから半世紀も廃墟として放置され続け、遂に、華々しい開業当時の姿に舞い戻ったのでした。

車両の周りには、電車好きの小さなお友達や大きなお友達、当時を懐かしむお年寄りで賑わいます。

車内も見学可能。座って、当時の映像を楽しむこともできる。

中に入ると、2つドアの車内に小ぶりなボックス席が並びます。未来の乗り物とはほど遠い、重厚感溢れる昔の鉄道車両です。

南北に通り抜けられる構造。

建物を通り抜けて反対側へ出ると、西洋のお城のような外観をした駅舎全体を見ることができました。広い館内は、水族館の新館、モノレール展示室、緑の相談所として活用されています。

行楽地 “手柄山” の現在

市民の憩いの場として利用される「手柄山中央公園」ですが、そこには華やかな行楽地の記憶が残ります。

水族館

家族連れで賑わう、山の上の水族館。

博覧会終了直後の1966年に開業した「姫路市営水族館」。かつて多くの娯楽施設のあった手柄山に、現在も残る人気施設です。

2011年には拡張工事が行われてリニューアルオープンしました。

回転展望塔

昭和の博覧会らしい、近未来的なデザイン。

山頂には、姫路大博覧会のシンボル「姫路博テーマ塔」も残ります。

会期終了後は「回転展望台 手柄ポート」となり、回転展望喫茶として長いこと親しまれてきましたが、2018年に営業を終了。現在はモニュメントとして残されています。

文化センター

1972年に開業した多目的ホール施設。

1972年には「姫路市文化センター」がオープンします。

老朽化に伴い2021年に閉館して、現在は姫路駅近くに新しいコンベンション施設「アクリエ姫路」がオープンしています。

遊園地

モニュメントとして観覧車のゴンドラが保存される

1974年には「姫路市民プール」、その3年後には「ひめじ手柄山遊園」が開業します。

しかしながら、他の遊園地と同じように、少子化やレジャーの多様化の影響で入園者数が激減。2020年に閉園となりました。

このように、かつて手柄山に集まった多くの施設たちは、老朽化や集客減により、閉鎖や移転が相次いでいるのです。

スポーツの聖地化

しかし、そんな手柄山も衰退の一途をたどっているわけではありません。

陸上競技場、武道館、体育館、球場は今も残り、さらに2026年には「ひめじスーパーアリーナ」という新しいスポーツ施設が誕生します。同年には、JR山陽本線の新駅も開業予定です。

大衆娯楽
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時代遅れの昭和の行楽地からの脱却すると共に、モノレール廃止から半世紀を経て、再び鉄道でのアクセスが復活するのです。

訪問日 2022年3月

アクセス

施設:手柄山交流ステーション モノレール展示室
HP:公式サイト

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