インクラインと森林鉄道|高知県馬路村

高知県安芸郡の馬路村(うまじむら)は、かつて林業で栄えました。

村の産業と生活の中心にあったのが「魚梁瀬(やなせ)森林鉄道」です。最盛期には総延長250㎞にも及ぶ路線網を誇りましたが、昭和の中頃になると姿を消します。

現在の馬路村は、ゆず製品と観光業に力を入れています。

村の観光拠点である馬路温泉のすぐそばには ”森林鉄道” と ”インクライン” の2つの乗り物が復元されており、往年の歴史を伝えています。

高知県馬路村

土佐くろしお鉄道の安芸駅から、コミュニティバスに揺られることおよそ1時間。ようやく終点の「馬路」バス停に到着しました。馬路村までのアクセスはかなり悪く、そもそも海と山に阻まれている高知県の、さらに山奥に位置しています。

それにも関わらず、人口わずか800人の村に 年間約6万人が訪れています

バス停のある馬路村役場から橋を渡ると「馬路温泉」に辿りつきます。ここは日帰り温泉や宿泊施設、飲食施設のある村の観光の拠点となっていて、そのすぐ目の前には “駅” があります。

馬路温泉前駅

鉄道が廃止された村に、突如現れる駅舎と機関車。

このログハウス風の小さな駅は「森林鉄道」と「インクライン」の運行拠点 です。

・森林鉄道   大人500円/小人300円 
・インクライン 大人400円/小人300円

馬路村の観光資源として、毎週日曜日と8月を中心に運行されています。

それでは切符を購入して、かつて木材輸送で使われた乗り物たちを体験してみましょう!

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インクライン(観光用傾斜鉄道)

山頂へ向かって伸びる赤いレールは、遠くからもよく目立つ。

まず乗車するのは「インクライン」。急斜面での木材の運搬などに使われた乗り物です。

軌道は全長97m、最大傾斜角37度にも及びます。勾配の角度が日本一として知られる「高尾山ケーブルカー」の31度よりも、かなり急な斜面を昇り降りしているのです。

客車は1両単体で、運転席が斜面下部、乗客スペースが斜面上部に設置されています。遮るものは何もなく、ゆっくりと昇り始めると心地よい風が入ってきました。

ケーブルカーとエレベーターを組み合わせたような姿は “斜行エレベーター” にも似ています。ロープの両端には客車と錘がそれぞれ繋がれており、中間地点でそれ違うともうすぐ頂上です。

ふと、横を見ると

深い山々に隔てられた、馬路村の小さな集落が一望できました。

エコロジーな水動力

高低差約50mを昇り降りするインクラインは、なんと 電気もガスも使わない “無動力” で動いています。これこそが、通常のケーブルカーや斜行エレベーターとの大きな違いです。

変な乗り物
普及することはなかった、不思議で奇妙な乗り物たちを紹介します。

ではどうやって動かすのかというと、水の重さを利用しています。

タンクから水の排出、注入を行う。

仕組みは非常にシンプルです。

客車のタンクの水を排出する→錘よりも軽くなる→上昇
客車のタンクに水を注入する→錘よりも重くなる→下降

運転手は、乗客の総重量と錘のバランスを見ながら水の量を調整しながら客車を動かし、ブレーキを操作して速さを調節します。なんともエコロジーな仕組みです。

最盛期には馬路村周辺だけでも数十箇所が設置されたインクラインでしたが、やがて森林鉄道とともに役目を終えて姿を消します。

現在運行されているのは、1995年に観光用に復元されたものです。

森林鉄道(トロッコ列車)

麓に戻ってきて、続いて乗るのは「馬路森林鉄道」です。

実物の3分の2スケールで再現された、蒸気機関車を模したディーゼル機関車と3両のトロッコ客車たち。インクラインと同じく1995年に運行を開始しました。

駅舎や客車にはふんだんに杉木材が使用されており、林業を感じさせます。

もう既に夕方の時間帯ということもあり、他にお客さんは誰もいません。一番後ろの席に座って、貸切状態で出発進行!

公道のすぐ横に敷かれた線路は、遊園地のミニトレインにはない臨場感がある。

列車は全長300mのコースをきびきびと2周します。窓も天井もない客車は、かなりの開放感です。夏場は相当涼しいことでしょう。

404 NOT FOUND | レイワレトロ探訪
祝祭空間のB面

西谷川に沿ったコースにはアップダウンもあり、深い森の中に敷かれた簡易的な軌道もなかなかのリアリティです。往年の森林鉄道を体験するには十分な施設でしょう。

途中には、静態保存されたディーゼル機関車がありました。かつてはこのような列車がたくさんあり、魚梁瀬杉などの木材や地元住民を運んでいたのです。

では、廃止された線路はどうなったのでしょうか?

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魚梁瀬森林鉄道

1911年(明治44年)の田野~馬路間の開業を皮切りに、高知県中芸エリアに広大な路線網を築いた「魚梁瀬森林鉄道」。昭和初期には総延長250㎞にも及び、地域を支えました。

しかし、道路が整備のよるトラック輸送への切り替わりやダム建設による軌道の水没により、1964年(昭和39年)に全線廃止されます。

魚梁瀬丸山公園の保存鉄道

集落からさらに16㎞ほど奥にある魚梁瀬地区には、より本格的な保存鉄道があります。

魚梁瀬丸山公園で運行されている「魚梁瀬森林鉄道」では、実際に使われていたディーゼル機関車が動態保存されており、全長400mのコースも用意されています。ここでは乗車体験だけでなく、運転体験も可能です。

集落の廃線跡

廃線跡のほとんどは道路に転用されましたが、橋やトンネルの一部は今も残ります。

2009年には「旧魚梁瀬森林鉄道施設」として 国の重要文化財 にも指定されており、林業の歴史や技術を現在に伝えています。またその一部は、集落の中にもあります。

集落の南側には石造りのトンネル「五味隧道」があります。

かつて列車に乗った人々は、トンネルを抜けた先に集落が広がるのを見て、村に帰ってきたことを実感したのだそうです。

隧道のすぐ近くには、「馬路村ふるさとセンター まかいちょってや」があります。

中に入ると、大量の森林鉄道の写真が飾られていました。既に廃線から半世紀以上が経ち、新たな産業や交通もありますが、それでも今も林業と鉄道は特別な存在なようです。

訪問日 2022年12月

アクセス・宿泊

HP:インクライン
   馬路森林鉄道
交通:高知県東部交通バス
宿泊:馬路温泉の予約と概要は こちら から
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この記事を書いた人
Shizu

1997年生まれ。
旅行代理店に勤務する傍ら、
ブログ運営と国内旅行に力を注ぐ。

若者の視点から ”レトロ” を追求しており、各地を巡り紹介する。
ブログは中学生の頃から書き続けているが、文章力はなかなか上がらない。
埼玉で生まれ育ち、大学時代を群馬で過ごして、現在は東京に住む。

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