日本列島がテーマパークブームに沸いた1990年代に、長崎県佐世保市に現れたオランダの街並み。
低迷期からのV字回復、そしてコロナ禍を経た “日本最大級のテーマパークの現在” を紹介します。
バブル期の壮大な夢


長崎県佐世保市に広がる壮大なランドスケープ。出入国ゲートをくぐると、憧れのヨーロッパの景色が広がりました。
園内には運河が張り巡らされ、陸地にはずらりと洋風建築が並び、そこを交通機関が行き交います。遊園地というよりは、もはや1つの都市です。
| 総工費 | 面積 | |
| 東京ディズニーランド | 1800億円 | 約51万㎡ |
| ハウステンボス | 2200億円 | 約152万㎡ |
| ユニバーサルスタジオジャパン | 1700億円 | 約54万㎡ |

日本最大級のテーマパークとして、1992年に開業したハウステンボス。その目的は娯楽施設に留まらず、宿泊型リゾート施設、さらには “3万人が暮らす環境都市” を目指したものでした。
さすがに3万人は実現しなかったものの、分譲住宅地「ワッセナー」では戸建て130棟とマンション10棟が建てられます。日本一広いテーマパークは、日本唯一の住むことのできるテーマパークでもあるのです。

観光都市で過ごす1日
ハウステンボスでの過ごし方は、従来の遊園地のそれとはまるで違います。美術館や博物館を巡りながら食事や買い物を楽しむ、まるで休日の軽井沢のような、パークの1日を紹介しましょう。

アート・グルメ巡り
まず最初に訪れたのは、ゲートをくぐってすぐの場所にある「テディベアキングダム」。伊豆や那須などにもある、行楽地の定番施設です。
続いて訪れたのは「ショコラ伯爵の館」。カカオの香りに包まれた館内でチョコレートの歴史や製造工程を眺め、実際に食べることもできる体験型ミュージアムです。




ランチにはソーセージとビール、ディナーにはチーズフォンデュをいただきました。古き良き街並みの中で、その場所に合ったものを食べる。これぞ由緒正しき観光地の嗜みです。
スタッドハウスとドムトールン

そんな古き良き街並みを形作るのが、忠実に再現されたオランダの名建築たちです。
アムステルダムシティの広場前に堂々とそびえるのは「スタッドハウス」。館内は「ギヤマンミュージアム」になっており、美しいガラス製品が展示されています。


天高くそびえる塔は、高さ105mの「ドムトールン」。もはやテーマパークの中であることを忘れるほどの、美しく神秘的な塔です。
展望台からは、ヨーロッパの街並みと大村湾の絶景を一望できました。園内最奥部に目をやると、森の中に立派な宮殿が佇んでいました。

オランダの宮殿

その宮殿の名は「パレス ハウステンボス」。オランダ ハーグ市郊外に実在する宮殿「ハウステンボス」を、忠実に再現して造られました。パーク名の由来にもなった建物です。
周りには美しい庭園が広がり、館内は「ハウステンボス美術館」となっています。黄金の館という、いかにもバブリーな展示コーナーもありました。


アトラクションとV字回復

ここまでいろいろと “見て” きましたが、やはりテーマパークのアトラクションは “乗って” こそ。ここからはライド型やアクティビティタイプのアトラクションを紹介します。
観覧車とメリーゴーランド
まずはメリーゴーランド。2022年に登場した「スカイカルーセル」は、日本唯一の3階建てメリーゴーランドです。


「白い観覧車」は高さ48m、2011年に登場しました。
ハウステンボスでは希少な、遊園地タイプの2つのアトラクション。ヨーロッパの街並みに調和しつつ、遊園地的な楽しみを提供しています。

アクティビティ
2010年以降のハウステンボスでは、アトラクションとイベントが拡充が進められてきました。それを手掛けたのが大手旅行会社「H.I.S.」の澤田氏です。

2012年には、長さ日本一のジップライン「シューティングスター」や大型アスレチック「天空の城」、2013年には立体迷路「The Maze」、そして2019年には「天空レールコースター疾風」が導入されます。
広い敷地と豊かな自然を活かしたアクティビティ系のアトラクションは、遊園地やテーマパークのメインターゲットである、若年層やファミリー層の心を掴んだのです。
イルミネーション
夜になると、園内はまばゆい光に包まれます。

2011年から始まった「光の王国」。世界最大級の規模のイルミネーションイベントは大きな話題となり、閑散期の冬季の集客に成功します。
これらの施策が功を奏して、2000年台後半には100万人台まで低迷していた年間入園者数は、2015年には300万人を超えます。見事V字回復を達成したのです。


イルミネーションやアクティビティは、近年の屋外レジャー施設によく見る手法です。しかし、それを2010年代頭から取り組んできたハウステンボス(というよりは澤田氏)には、先見の明があったと言えるでしょう。
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テーマパークブームとハウステンボス誕生
ここからは、さらに歴史を遡って1980年代の “ハウステンボス開業前夜” を見てみましょう。
長崎オランダ村の開業
千葉県浦安市に「東京ディズニーランド」が誕生した1983年、長崎県西彼町に「長崎オランダ村」が開業します。
当時としては珍しい “海外旅行気分を味わえる施設” として人気を集め、集客→拡張→集客により大きく成長します。それをさらに発展させるべく、新たなテーマパークの構想が持ち上がりったのです。
三次産業の拡大とリゾート法
1987年にリゾート法(総合保養地域整備法)が制定されると、TDLや長崎オランダ村の成功に続けとばかりに、全国津々浦々でテーマパーク構想が持ち上がります。バブルの好景気に押されて、列島は空前のテーマパークブームに沸きます。


一方で、オランダ村に代わる新たなテーマパークは、佐世保市内の埋立地に造ることが決定しました。もともと工業用地として造成されたものの、地盤が弱くて工場誘致できなかった土地を、上手く活用したのです。
当時は、国内産業の空洞化が進んでいた一方で、新たな産業の柱として “観光業” に期待された時期。ハウステンボスの建設は、二次産業の衰退と三次産業の拡大を象徴するような出来事でもあったのです。

アフターコロナと今後の展望
こうして誕生したハウステンボスは、紆余曲折を経ながらも30年以上に渡って営業を続けてきました。最後に、パークの将来を左右する3つのトピックスを見てみましょう。
① 統合型リゾート(IR)の中止
観光立国の目玉として法整備や誘致活動が進められている「統合型リゾート(IR)」。長崎県では、ハウステンボスに隣接する土地への誘致を進めてきましたが、最終的に中止となります。
もし実現していたら、2つの大型集客施設が隣接することによる相乗効果が見込めていたことでしょう。
② H.I.S.から刀へ
V字回復を成し遂げたハウステンボスも、2015年以降は緩やかな減少傾向にありました。そこへ、2018年の熊本地震と2020年のコロナ禍が追い打ちを掛けます。


2022年には「H.I.S.」から「PAG(アジア系の投資ファンド)」へ経営が移ります。そこで新たに運営を任されたのが、森岡毅氏率いるマーケティング集団「刀」です。
目指すは、年間入園者数300万人(2027年)です。
森岡毅氏は、当時低迷していたユニバーサルスタジオジャパンの入場者数を大幅に増やし、経営立て直しを実現した。現在はマーケティング集団「刀」を立ち上げ、テーマパークの再生や運営などを手掛ける。
③ ジャングリア開業と、九州という立地
関東・中部・関西の三大都市圏から遠く離れた西九州。アクセスの悪さは、これまで集客の大きな足かせになっていました。しかし国外へ目を向けると、日本の西の端である九州は、アジアに最も近い立地とも言えるのです。
この立地を活かした施設が、2025年7月に沖縄で開業予定の「ジャングリア」です。ターゲットは “飛行機で3時間圏内に住む4億人”。運営は「刀」が手掛けます。

新たに沖縄に誕生する施設と、長崎オランダ村時代から数えて40年以上もの間、日本のテーマパークの栄枯盛衰と再興を見守ってきた施設。日本列島の西の端が、我が国のテーマパーク産業のブレイクスルーになるのか?今後に注目です。
訪問日 2021年3月9日
アクセス
交通:博多駅から「特急ハウステンボス号」で約1時間45分
運営:株式会社ハウステンボス
HP:公式サイト
ハウステンボス直営の高級ホテル。いつか泊まってみたい…。
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