日本唯一の「ゴムタイヤ方式」や、およそ4.5㎞にも及ぶ「地上シェルター」などの特徴的な設備を擁する札幌市営地下鉄。人口188万人都市を支えるインフラの魅力に迫ります。
南北線

1971年(昭和46年)に開業した「札幌市営地下鉄 南北線」は、東京・大阪・名古屋に次いで 全国で4番目に開業 した歴史ある地下鉄です。
北の麻生駅から南の真駒内駅までの14.3㎞を結び、1日約22万人もの人々に利用される、札幌の大動脈です。


日本唯一のゴムタイヤ方式を採用した地下鉄。
札幌市の都市軸をつなぐ

北海道最大のターミナル「札幌駅」にやってきました。近郊電車や快速エアポート、特急列車がひっきりなしに発着し、その傍らでは北海道新幹線の建設が着々と進んでいます。
地下へ潜ると、長さ1.9㎞に及ぶ巨大な地下街と、地下鉄南北線・東豊線の「さっぽろ駅」が現れます。1日の乗降客数は約16.6万人(2025年)を誇り、札幌市営地下鉄の中では第2位の規模です。

第1位はどこかというと、隣の「大通駅」です。北海道の商業・経済の中心地であり、南北線・東豊線・東西線の3路線が交差するこの駅は、1日約17.5万人(2025年)が利用します。
さらに南へ進むと、日本三大繁華街のひとつである “すすきの” への玄関口「すすきの駅」へと繋がります。



「札幌駅ー大通公園ーすすきの」を一直線に貫くこのルートは、東京でいえば山手線、名古屋なら東山線、大阪なら御堂筋線に相当する、まさに札幌市の都市軸そのものです。
沿線住民の日々の足としてはもちろん、観光客やビジネス客の利用も多く、道外からの旅行者にとっては快速エアポートの次に馴染みのある鉄道と言えるでしょう。
地上シェルター区間

都心から郊外へと抜けて「南平岸駅」を過ぎると、巨大なシェルターに覆われた地上区間を走り始めます。
建設費削減と工期短縮のために高架線区間で造られたのですが、豪雪地帯である札幌では積雪時に運休のリスクが生じます。そこで、走行空間をまるごとシェルターで包み込んでしまったのです。

札幌冬期五輪

「自衛隊前駅」を過ぎると、西側には陸上自衛隊真駒内駐屯地、東側には車両基地が広がります。電車は丘陵地の脇を走り抜け、車窓からは緑豊かな風景が過ぎ去ります。
いよいよ末端まで来たことを感じながら、終点の「真駒内駅」に到着しました。

ここ真駒内は、1972年(昭和47年)に開催された「札幌冬季オリンピック」のメイン会場となった場所です。駅周辺には各種競技会場や選手村などが設けられ、開催2ヶ月前には地下鉄が開業し、歓声と熱狂の舞台が整えられました。
現在の真駒内は “郊外の拠点” となっており、落ち着いた雰囲気が漂います。駅周辺には団地が広がり、周辺地域を結ぶ路線バスが発着しています。
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東西線・東豊線

1976年(昭和51年)には、市内の東西方向をつなぐ「札幌市営地下鉄 東西線」が開業します。「新さっぽろ駅」から「宮の沢駅」までの20.1㎞を結んでおり、3路線の中で最長の路線です。
1988年(昭和63年)には「札幌市営地下鉄 東豊線」が開業します。混雑する南北線のバイパス機能を担う一方で、後発路線ということもあり当初は利用者の伸びに苦戦しました。


現在の札幌市内における都市交通は、これら地下鉄3路線が背骨の役割を果たし、カバーしきれないエリアを市営バスや路面電車が保管することで、きめ細やかな交通ネットワークを形成しています。それともう1つ、JR発足以降に市内輸送で存在感を増しているのが、JR函館本線です。
ここでふと「もし地下鉄とJRが相互直通運転をすれば、さらに便利になるのでは」という疑問が浮かびました。しかし、それが実現することはありません。なぜなら、札幌市営地下鉄は一般的な鉄製レールと鉄車輪ではなく、独自の「ゴムタイヤ方式」を選択したからです。
それでは、なぜ札幌市は独自の規格にこだわったのでしょうか。

ゴムタイヤ方式

1960年代の札幌市では、急速な人口増加による交通渋滞の悪化と、積雪期における安定運行という2つの課題を抱えていました。都市のさらなる発展のためには、新たな軌道系交通機関の導入が必要不可欠だったのです。
モノレールやトロリーバスなどが検討されましたが、最終的には大量輸送と高速性に優れた「地下鉄」に決まります。さらに騒音が少なく、急勾配や急カーブにも対応できる「ゴムタイヤ方式」が抜擢されたのです。

第3次試験車はるにれ

日本初のゴムタイヤ式地下鉄を実現するべく、1964年(昭和39年)より札苗実験場にて本格的な技術開発と走行試験が開始されました。
自衛隊前駅の高架下にある「札幌市営交通資料館」には、当時の試験車両が大切に保存されています。そのひとつが 第三次試験車両「はるにれ」 です。短尺で丸みを帯びた姿は、一見するとマイクロバスや現代の新交通システム(AGT)を思わせます。どこか愛らしくレトロフューチャーを感じさせるデザインです。
第4次試験車すずかけ


続いて開発された 第四次試験車両「すずかけ」 は、車体サイズこそ通常の鉄道車両と同じですが、鉄骨フレームが剥き出しの車体とゴムタイヤの組み合わせは、とても電車には見えません。大型トラックや工事現場のような印象です。
札幌市交通局1000形・2000形電車

こうした試作を経て、1971年の開業とともに満を持して投入されたのが 営業用車両「1000形・2000形」です。ここにきてようやく一般的に思い浮かべる “鉄道車両” らしい姿になりました。
開業から半世紀が過ぎ、札幌の街は地下鉄と共に大きく発展してきましたが、かつて雪国の未来を切り拓いた試行錯誤の痕跡は、今も高架線の下でひっそりと佇んでいます。
訪問日 2026年8月
アクセス・宿泊
HP:札幌市交通資料館
札幌市交通局
交通:資料館は、自衛隊前駅から徒歩すぐ
