1989年(平成元年)にオープンした「スター・ツアーズ」と「パン・ギャラクティック・ピザ・ポート」。そこはどこか平成レトロを感じる、未来宇宙空間でした。
スター・ツアーズ

東京ディズニーランドのトゥモローランドにある『スター・ツアーズ』は、映画『スターウォーズ』の世界を楽しめる人気アトラクションです。
映像に合わせて前後左右に激しくライドが動く、いわゆるフライトシミュレーターとなっており、リアルな宇宙飛行を体験することができます。


建物内に一歩足を踏み入れると、どことなく空港のターミナルのような空間が広がりました。頭上の行き先案内板を見上げれば、これから “乗り物” に乗るんだという実感と期待が高まります。
ゲストは星間旅行会社「スター・ツアーズ社」の主催するツアーに参加して、エキゾチックな惑星エンドアを目指す―――。という以前のバックグラウンドストーリーからは若干変化したものの、さながら交通インフラの旅情は今も健在です。
1989年 宇宙の旅へ

東京ディズニーランドのグランドオープンから6年後の1989年(平成元年)。国内ではバブル経済が絶頂を迎え、世界では冷戦終結という時代の転換点に差し掛かる中で、“宇宙解禁” の鮮烈なキャッチフレーズと共に初代『スター・ツアーズ』は登場しました。
本作は1977年から1983年にかけて公開された映画『スターウォーズ』旧三部作を基にしていますが、どちらかというと映画のストーリーの再現よりは、「スター・ツアーズ社」という星間旅行会社による惑星へのツアーという側面が強調されていました。(もっとも、そのツアーは毎回トラブル続きで、まともに目的地に着いた試しはないのですが)。
私が初めて搭乗したのは2000年代の後半。当時はまだ小学生だったこともあり、“造り物” であることは理解しつつも、建築物として確かに存在する建物に入り、アナウンスや映像による旅の案内を受けて、スタースピーダー3000のキャビンに乗り込む一連の流れは、なんともリアルな宇宙旅行体験でした。
また、ちょうどこの頃は新作映画が途絶えていたこともあってか、私にとっては映画よりも「スター・ツアーズ」のストーリーの方が身近にありました。それだけ「スター・ツアーズ」の独自性は強かったのです。

しかし、オープン当初は驚異的な待ち時間を記録したハイテクアトラクションも、末期はずいぶんと閑散としていました。
誰も並んでいない中で、無邪気に動き回り、冗談を喋り続けるロボットたち。奥の搭乗口は閉ざされ、手前の2機のみで稼働するスタースピーダー3000。時代を感じさせる、アナログ感満載の搭乗案内の映像。

そのどこか寂しげな光景は、1989年の日本人が無邪気に夢見た「すぐそこまで来ている、手の届く輝かしい未来予測図」が、バブル崩壊という現実を経て、どこか醒めた視線を持つ現代の空気感へと軟着陸した、そのギャップの表れだったのかもしれません。
2013年 リニューアル

その後は大規模なリニューアルを経て、2013年に『スター・ツアーズ:ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー』へと生まれ変わりました。
計97通りものランダムなストーリーが導入されたことにより、搭乗する度に異なるルートや惑星へと行けるようになり、エンターテイメントとしての完成度や体験の新鮮さが飛躍的に向上したのです。
しかしその一方で、かつてQラインで人間臭く働いていたドロイドたちの多くがリストラされ、ターミナルや交通インフラとしてのリアリティーは薄まりました。ツアーへの参加という設定も無くなり、星間旅行会社「スター・ツアーズ社」の存在感も小さくなっています。

ここでちょっと本の紹介。
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パン・ギャラティック・ピザ・ポート

宇宙旅行から帰還して、そのままトゥモローランドの2階のデッキを進んでいくと、ひときわキッチュな魅力を放つ、宇宙人の経営するピザショップに辿り着きます。
ここは銀河に店舗網を拡げている「パン・ギャラティック・ピザ・ポート社」の、記念すべき太陽系1号店。イタリア系宇宙人の店長「トニー・ソラローニ」が、本社の催促に追われながらも今日も健気に営業を続けています。

1989年(平成元年)にスターツアーズとともにオープンしたこのレストランは、大規模なリニューアルを受けることなく、およそ35年以上に渡って営業を続けてます。
頭上では巨大な全自動ピザ製造マシーンが音を立てて稼働し、オリジナルキャラクターが労働に勤しみ、大型ビジョンでは店舗のコマーシャルが延々と流され続ける。「スター・ツアーズ社」が星間旅行会社としてのアイデンティティを喪失した一方で、「パン・ギャラクティック・ピザ・ポート社」はこれでもかというくらい独自性をアピールしています。一度来店すれば、あの哀愁を帯びた独特なメロディーがしばらくは頭から離れないことでしょう。
未来は効率化に進んでいる

人の手を介することなく、一から生地を捏ねてピザを焼き上げる夢の全自動マシーン。1989年に思い描かれた、未来の飲食店の姿です。
しかし実際の未来は、まったく違うものでした。工場で徹底的にコストを削って大量生産された料理が、無駄のない物流で運ばれる。そこにあるのは仰々しいメカや調理人ロボットではなく、極めて静的で合理的なシステムです。今となっては「宇宙の飲食店」というテーマも、どこか古臭く感じます。

何もかもが効率化へと進む現代において、巨大で複雑なアナログメカが堂々と鎮座している店内。これほど空間と演出にコストを掛けた店舗建築を造るのは、現代ではほぼ不可能でしょうし、メンテナンスして維持するのも相当大変なことでしょう。
しかし、この過剰なまでの演出や、合理的ではないゆえの愛おしい「こだわり」こそがディズニーランドらしさであり、テーマパークの本質でもあります。夢と合理化とのせめぎあいの中で、「パン・ギャラクティック・ピザ・ポート」はどうなるのか。今後の行く末が気になります。
訪問日 2026年5月

