失われた場所・時代への強烈なあこがれを原動力に、実在しないはずの風景に実態を持たせた異空間。それがテーマパークであり、まぼろし博覧会です。
まぼろし博覧会

静岡県東部の伊豆半島。首都圏の膨大な人口を背景に、ファミリー向けのレジャー施設やから個性派ミュージアムまで、数多の観光施設がひしめき合っています。
そんな中で “国内最大級のB級スポット” として異彩を放っているのが、「まぼろし博覧会」です。

なんの脈絡もなく並べられた、クセの強い展示品たち。圧倒的な物量が、敷地面積3000坪をたっぷりと使って並べられており、その規模は、もはやミュージアムではなくテーマパークです。


エントランスへと続く坂道から、すでに非日常は始まっています。笑顔のキャラクターのお出迎えは、どこか不気味で落ち着かない。この時点で無理な人は引き返すでしょうし、好きな人はとことんハマるでしょう。
館内に入って、まずは一番の見どころへ向かいます。
熱帯密林と聖徳太子像

ガラス張りの巨大な温室の中に、ジャングルのように無秩序に生い茂る木々たち。熱帯密林の中で、古今東西の怪しい石像やオブジェが顔を覗かせています。

「夢に出てきそう」というよりも、今が夢の中なのかもしれません。
高さ11.5mを誇る “世界最大級の聖徳太子像” は、巨像恐怖症を発症させること間違いなし。周囲にはSFや古代文明を彷彿とさせる展示が置かれ、混沌とした世界観を演出しています。
白昼夢にドリームコアを見た
真っ昼間のまだ明るい時間帯。目は開き、身体は動いて、意識ははっきりしているはずなのに、まるで夢の中に迷い込んだかのような感覚に陥ります。


近年のネットミームとして知られる「ドリームコア」は、幼少期の記憶が突然バグを起こしたかのような、懐かしさと不気味さが入り混じる不思議な世界観を指します。

ここにはパステルカラーの子供部屋や、無機質な屋内プールはありません。ネットでお馴染みのイメージからは外れているかもしれません。
しかし、本来実在するはずのない “脳内のバグった風景” を目にしたときの感覚は、まさに夢そのものです。こうした形のない概念に実態を持たせることこそが、テーマパークという巨大な装置産業の役割なのでしょう。
熱帯植物園「伊豆グリーンパーク」の跡

かつてこの場所には「伊豆グリーンパーク」という熱帯植物園がありました。
1970年(昭和45年)に開園し、伊豆の観光黄金時代を支えてきましたが、需要の変化などを背景に2010年に閉園します。その跡地を引き継いで、2011年に誕生したのが「まぼろし博覧会」なのです。
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昭和の時代通り抜け

ドリームコアの次に紹介するのは “ノスタルジック” です。混沌とした展示物たちの中でも、「昭和レトロ」は全体を貫くテーマの1つになっています。


まぼろし博覧会を造ったのは、株式会社データハウスの社長・鵜野義嗣氏。ここでは「セーラちゃん」として活動しています。
昭和後期から平成初期にかけて出版業界を生き抜いた業界人が、膨大な私財と情熱を投じて築き上げた異空間。そこには氏の過ごした古き良き時代の風景が、リアリティーを持って(ちょっと過剰に)反映されています。
テーマパークはノスタルジックから生まれる

もっとも、テーマパークの代名詞である「ディズニーランド」もウォルト・ディズニー氏の懐古主義が炸裂して造られた場所でした。真の主役はネズミのキャラクターではなく、彼が少年時代を過ごした古き良きアメリカの風景であり、それが今や国境を越えて支持されているのです。
テーマパークというのは、ノスタルジックへの強烈な憧れからインスピレーションを得た「巨大な装置産業」でした。そして強力なIPの裏にある「もう戻れない場所・時代への執着」こそが、人々を惹きつける磁場の正体なのかもしれません。

屋外エリアと規模拡張

展示物の一部は屋外へと溢れ出し、敷地内では今もなお新しい建物が増築されています。
拡張を続ける姿はテーマパークらしいですが、どちらかというと集客のためではなく、増える展示物を収蔵するための拡張であります。この部分は博物館的な発想です。



施設は老朽化が進んでおり、一部は廃墟のようになっています。展示物はあまりにも雑多で、もはやガラクタとの区別がつきません。
しかし、ここで目撃したモノは決して忘れないでしょう。夢で見た光景が、忘れられないように。
訪問日 2024年2月
アクセス
HP:公式サイト
交通:東海バス「白田出口」下車すぐ
