岡山県津山市。
中国山地の山あいに位置する小さな市街地を歩いていると、商店街の奥で巨大なハコモノ施設にたどり着きました。
南北 約160m、高さ 約35mにも及ぶその姿は、まるで街なかに現れた要塞のようでした。
バブル期の巨大建築

1999年(平成11年)に開業した「アルネ・津山」は、天満屋百貨店をメインテナントに音楽ホールや市立図書館、行政オフィスなどが一体となった大型複合施設です。
計画が持ち上がったのは、1980年代のバブル期のこと。郊外へ流出する買い物客を食い止め、中心市街地の空洞化に歯止めをかける「コンパクトシティ政策」の先駆けとして、プロジェクトが始動します。

1997年(平成9年)に「新魚町地区第一種市街地再開発事業」が着手されると、およそ2年の工期を経て竣工しました。

驚くべきはその規模です。敷地面積 約13000㎡、延床面積 約72000㎡にも及ぶ建物は、人口9万人規模の街にはあまりにも巨大でした。
総事業は約270億円。バブル経済や地方創生ブームを背景に、当時の地方都市の再開発事業としては破格の予算に膨れ上がりました。
商店街のど真ん中にある

通常、大規模な再開発が行われる場所は、工場や物流施設の跡地などが一般的です。移転によりまとまった土地が生まれた結果、再開発のプロジェクトが動き出すというわけです。
ところがアルネ・津山では、現役で営業していた商店街を取り壊して、中心街のど真ん中に巨大建築を造りました。


かつての津山市街は「津山銀天街」という商店街を軸に、各商店街が東西北へと伸びる都市構造でした。多くの商店が密集し、百貨店や映画館も並んだ都市の中心部が、まるっと1つの巨大建築に置き換わったのです。
現在の津山市街は「アルネ・津山」を軸に、各商店街が手足のように伸びています。すべての商店街はアルネに通ずるのです。
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天満屋百貨店

1999年の開業と同時にオープンした「天満屋百貨店 津山店」。中国地方の内陸部・山間地域では、唯一の百貨店です。
ところが館内に入ってみると、重量感のある建物とは裏腹に 百貨店エリアの狭さ に拍子抜けします。開業当初は1,2,3階を埋めていましたが、現在は3階から撤退し、空きスペースも目立ちます。
公共施設

地上8階建ての大型施設ですが、その大半は公共施設や駐車場で占められており、純粋な商業エリアは僅かです。
8階 (屋上)駐車場
7階 駐車場/ベルフォーレ津山(音楽ホール)
6階 駐車場
5階 駐車場/行政オフィス(男女共同参画センター・消費生活センターなど)
4階 津山市立図書館
3階 子育て支援センター・保健センター・専門店
2階 天満屋百貨店
1階 天満屋百貨店
地下 駐車場
都市のあらゆる機能を無理やり1つの箱に詰め込んだような造りは、ある意味では究極のコンパクトシティの実現と言えるかもしれません。
赤字運営による問題

オープン当初こそ、開業フィーバーの熱気に包まれた「アルネ・津山」でしたが、その数年後には集客力や求心力が低迷します。周りの商店街はおろか、階下の百貨店にすら波及効果をもたらせられていないのが現状です。
しかし、テナント収入が下がる一方で、巨大建築を維持するためのランニングコストは毎年発生します。その穴埋めに使われるのが税金です。

地方創生の優等生は財政を逼迫する重荷となり、閑散とした館内は、いくら立派なハコモノを用意しても過疎化や郊外化に対抗するのは難しいという現実を、静かに突きつけています。
訪問日 2024年6月
アクセス
所在地:岡山県津山市新魚町17
最寄駅:津山駅から徒歩10分
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