大通公園といえば、“札幌の大通公園” と “名古屋の久屋大通公園” があまりにも有名ですが、実は横浜市にも大通り公園が存在します。


もし日本三大大通公園を決めるとするならば、知名度はダントツの最下位となるであろう “横浜の大通り公園”。市内有数の繁華街である伊勢佐木町に隣接し、地下鉄の駅がありながらも、賑わいに乏しく静かな空間が広がっています。
なぜ横浜の大通公園は地味なのか、実際に現地を歩いてみました。
JR関内駅から始まる2つの都市軸

横浜市内中心部にあるJR根岸線・地下鉄「関内駅」にやってきました。駅北側(東側)にはオフィスビルが立ち並んでおり、横浜スタジアムやレトロ建築などの港町ヨコハマらしさを感じられるおしゃれエリアが広がっています。
一方の南側(西側)には、イセザキ・モールの入口があります。歩行者天国となっている商店街を中心に、雑多な繁華街が展開しているのです。

そんなイセザキ・モールからわずか300mほど南側(東側)に、「大通り公園」の起点があります。
ここから南西へおよそ1.2kmにわたって伸びる「大通り公園」。開園は1978年(昭和58年)と、明治時代から続いている札幌と名古屋の大通公園と比べるとかなり新しいです。この歴史の短さこそが、横浜の大通り公園が地味な理由の1つでしょう。
JR関内駅を起点に、南西方面へと並行する2つの都市軸。商業集積地として賑わうイセザキ・モールとは対照的に人通りも少なく、一方で自然が豊かな ”緑の軸” になっています。
シンボリックな都市景観

「石の広場」「水の広場」にやってきました。
このあたりは特にきれいに整備されていて、大都市横浜にふさわしいシンボリックな空間になっています。もっとも、周りには横浜っぽい景観や、ランドマークになり得る ”塔” はありませんが。
テレビ塔×大通公園のコンビネーションは札幌と名古屋を代表する都市景観となっていますが、そういえば横浜にもありましたね。 “マリンタワー×山下公園” という最強の組み合わせが。
いかにも港町ヨコハマらしい都市景観の見られる山下公園ですが、その圧倒的な存在感のせいで大通公園が目立たなっている、と言うこともできそうです。
地下鉄 伊勢佐木長者町駅

さらに進むと、地下へと続く空間が現れました。
公園の下には横浜市営地下鉄ブルーラインが通っており、階段を降りた先には「伊勢佐木長者町駅」があります。

この駅は繁華街である伊勢佐木町の最寄り駅となっていますが、利用者はそれほど多くなく、快速も通過してしまいます。
かつて戦前には日本三大繁華街の1つに数えられるほどの賑わいを見せた伊勢佐木町も、現在は横浜駅エリアに後塵を拝してます。また伊勢佐木町の中心街から微妙に離れている立地も、この駅を目立たなくさせている要因の1つでしょう。
横浜市六大事業と運河埋め立て
地上の大通り公園と、地下の鉄道。この2つは ”横浜市六大事業” というプロジェクトの一環で生まれました。

ここには かつて吉田川・新吉田川という運河が流れていました。
江戸時代に干拓された吉田新田エリアを流れ、明治時代以降には市街地と港をつなぐ物流の水路として重要な役割を担いましたが、戦後になると役目を失います。運河は埋め立てられて、川底には地下鉄が、地上には防火帯としての機能を兼ねた公園が整備されたのです。
※横浜市六大事業とは、戦後の高度経済成長期に策定された横浜市の近代化プロジェクト。市営地下鉄や首都高の建設、港北地区や金沢地区の整備などがある。
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住宅地の公園

札幌や名古屋は、まちづくりの一番最初に大通公園が作られ、後からデパートやオフィスビルが集積することで街の中心軸として発展してきました。
一方の横浜は、もともと商業の軸として伊勢佐木商店街(イセザキ・モール)があり、物流の軸として運河が存在したわけです。

かつての物流の軸は ”交通の軸(地下鉄)と緑の軸(大通り公園)” へと変わり、沿道は良質な住宅エリアになりました。
多くのマンションが立ち並び、落ち着いた住環境となっている大通り公園エリア。その中心にある公園は、都会のオアシスというよりは、地域住民のための住宅地の公園です。
横浜橋商店街

住宅エリアには、地域住民のための商業地もあります。
大通公園と直角に交差するのは、下町風情溢れる「横浜橋通商店街」。水運による物流によって育まれた商業地です。商店街の名前は、かつて運河に架けられてた橋の記憶を現在に伝えます。
地下鉄 坂東橋駅

さらに歩き続けて、一駅隣の「阪東橋駅」までやってきました。
お察しの通り、ここにもかつて ”阪東橋” が架かっていました。中心地からもだいぶ離れ、駅入口もこじんまりとした印象ですが、乗降客数は伊勢佐木長者町駅よりも若干多いです。

ここが大通り公園の南端(西端)です。地下鉄の駅がある他には、これといったものはありません。
高速道路の入口

公園の先には、首都高速神奈川3号狩場線の「阪東橋IC」があります。
運河跡地には、もともとは地下鉄と高速道路を通す計画でした。しかし、地上には緑地帯を設けることになったため、高速道路は南側のルートへと迂回されます。高速道路の入口があるのは、その名残です。

高架の下には、阪東橋公園が広がります。ここでかつての運河は少し向きを変えて、根岸湾方面へ向かいます。
現在はほとんどが埋め立てられた横浜市内中心部の運河網ですが、かつては横浜港・中心市街地・根岸湾を繋ぐ一大ネットワークが形成されていたのです。
リニューアル計画

そんな横浜の大通り公園ですが、現在Park-PFIを活用したリニューアル計画が進められています。
Park-PFIとは、民間資金や経営ノウハウを活用して都市公園の魅力化を図ることで、代表的な事例として名古屋の久屋大通公園(Hisaya-pdori Park)が挙げられます。


魅力的な商業空間に生まれ変わった、名古屋の大通公園。
横浜の大通り公園にもカフェやレストランなどの商空間が造られますが、一方で遊具や休憩スペースなどの子育て世代に優しいスペースも拡充されます。
近年、新たな魅力の創出により注目を集めている都市公園ですが、横浜の大通り公園も大きく変わるかもしれません。
訪問日 2025年11月
アクセス
HP:公式サイト(横浜市)
リニューアルプラン(横浜市)
交通:地下鉄「伊勢佐木長者町駅」「阪東橋駅」



